Diary

茉莉花続き


「初めまして……ルークと、申します」

　真ん中に敷かれた布団の前、髪がさらりと流れ伏せられた少年の顔がゆっくりと上がる。震える声で、体で、翠緑の瞳がガイを捉えた。
　綺麗だ……と、少年──ルークを間近に見て、ガイは感嘆の溜息を洩らす。
　自分に怯えているのだろう、揺れる瞳は今にも泣き出してしまいそうで、けれど必死に耐えている。それはとてつもなく申し訳ないと思ったが、ルークと話す事が出来るのだと思うとガイは嬉しくて仕方なかった。

「初めまして」

　一歩、足を進める。びくりと小さな肩が跳ねた。苦笑しつつ、ガイはルークの真正面に座り胡坐を組む。
　さぁ、何の話をしようか。
　勿論、話すことなど考えてきていない。ただ、会いたかっただけで。抱くなんて論外だった。

「そんなに怯えなくても大丈夫だ。俺は、話がしたいだけだから」

　まずはこの、小鳥のように怯え、震えるルークを安心させる事が先だろう。ガイはにっこりと笑い、紅い髪にそっと掌を乗せる。柔らかな髪を梳くように撫でると、強張った体が、けれどガイの科白に少しだけ緊張を解いたみたいだった。

「話……ですか？」
「そう。何もしないよ」

　柔らかな声色で、大丈夫だと言い聞かせる。そうすればルークは、信じてくれたのか安堵するように息を吐いた。
　陰間茶屋で働いていて、ここまで純粋無垢で、素直な少年はいるのだろうか。
　頭を撫でるその掌の心地良さに、猫のように目を細め弛緩するルークは見た目よりも幼くみえた。


以下執筆中。
続きも頑張る(｀･ω･´)